研究概要

本計画研究では、CMBで観測される宇宙中性化の後、密度ゆらぎが成長して形成された初代天体が宇宙を再電離するまでの、宇宙年齢が数億年の時代(ダークエイジ) を宇宙赤外線背景放射(CIRB)の観測により探査する。

近年の観測より、近中赤外域のCIR は系外銀河の重ね合わせで説明できない大きな輝度、ゆらぎ、及び、波長1μm付近にピークをもつ特異なスペクトルを示す。その成因は、初代天体による水素ライマンα輝線を主とする電離紫外放射と解釈され、ダークエイジに迫る結果として注目されている。

本研究では、赤外線天文衛星「あかり」やロケット実験(CIBER)によるCIRBのゆらぎやライマンα線の詳細観測によって初代天体の寄与を検証するとともに、新たな研究の展開を目指してロケット実験を継続的に実施する。

これらの研究では、科学的成果を得るだけでなく、計画研A02と連携してSPICA等の将来の衛星搭載装置の基礎開発をも目指す。

また、太陽系ダスト雲から脱出する惑星探査機を用いて黄道光(前景放射)の影響を完全排除する「究極のCIRB観測ミッション」の検討を行なう。

さらに、初代天体形成に伴う水素分子線や形成後間もない原始銀河のダスト放射からなる遠赤外域のCIRBの検出を目的として、「あかり」データの解析を進めるほか、CIRBを形成するダークエイジの天体がCMBに及ぼす影響を計画研究A01およびA04と連携して総合的に研究する。